「ゴザの舞台、テープの曲、3人の踊り」から13年
●東京が一番暑かった日、芸者衆は幻想的な舞台にいた
東京が37.7度の今夏最高気温を記録した8月7日は、八王子まつりの初日。恒例の人気行事・芸者衆の「宵宮の舞」に行ってきました。開宴20分前に会場の中町広場へ着くとそこはすでに人だかりが……。舞台前に敷かれた桟敷は満席、三重四重の立ち見の人々はみるみる膨らみ、警備の警官がロープを張って通り道の確保のために声を張り上げていました。
18時半になり芸者衆の仕度が整うのを待つまでの間、地元・中町の町会長さんが八王子の芸者衆について説明。
「今年で芸者衆の『宵宮の舞』も13回目になります。平成15年、第1回目のときはこんな立派な舞台もなく、地べたに敷いたゴザの上で踊っていただきました。しかも地方さん(三味線や唄などを担当する芸者衆)の演奏ではなく、曲はテープで流し、踊る芸者衆もたった3人。そんな状態からスタートしたわけですが、芸者衆は〝やっぱり生の演奏で踊りたい〟と三味線やお囃子の稽古を始め、一生懸命努力をしてきました。仲間も少しずつ増やし、今では若い芸者衆を中心に全部で20名に。踊りだけでなく三味線も唄もお囃子も芸者衆の生演奏で披露できるまでになったのです。花柳界が全国的に衰退しつつある今、八王子のように勢いを増している花柳界は本当に珍しいと思います。これからもみなさん、八王子芸者衆への応援をよろしくお願いいたします!」(趣旨をかいつまんでまとめました)
地元の方々が芸者衆を大切に想い、その成長を大事に見守ってこられた様子が伝わってくる内容で、観客の中からも「ほー」「へー」「すごいな」と感心する声が聞こえてきました。この町会長さんの話のおかげで、芸者衆を待つ皆さんの気持ちがより温かくなったような気がします。
芸者衆が登場し、4~5曲を披露。約20分ほどの間に空はだんだん暗くなり、対照的に舞台の明るさが浮き上がり、芸者衆を幻想的に照らします。なんとも不思議なこの光景、何かに似ている……。思い浮かべたのは薪能の幽玄の世界でした。
●女優さん登場のサプライズにお客さんも大喜び
芸者衆の踊りが終わったあと、三味線の弾き唄いを担当していた芸者のめぐみさんが「サプライズがあります」――。舞台上で、八王子花柳界をテーマに制作中のNHKBSプレミアム「東京ウエストサイド物語」の撮影が引き続き行われたのでした。芸者姿に扮した主人公・羽田美智子さん突然の登場にお客さんも大喜び。50歳で芸者修業の道に入った主婦がついにお披露目を果たすという、ドラマのクライマックスなのだとか。
ちなみに当ドラマでは、めぐみさんの置屋「ゆき乃恵」内部でも撮影し、めぐみさんはじめ芸者衆もキャストとして登場。ストーリーもさることながら、八王子芸者衆の〝女優っぷり〟も楽しみです。
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