<フィクション>『幻の柳橋』【3章】川と芸者と柳橋。①

柳橋【3】―①

どの花柳界にもそこが栄えた背景や人が集まる理由、地の利というものがある。新橋が鉄道と銀座と歌舞伎座、赤坂が海軍と国会議事堂と官公庁、浅草が吉原と浅草寺と芝居小屋、神楽坂が路地と文士と早稲田大学だとすれば、柳橋は隅田川である。

座敷に居ながらにして川を眺められ、川風に吹かれることを売りにできる花柳界は東京では珍しい。 続きを読む <フィクション>『幻の柳橋』【3章】川と芸者と柳橋。①