<東京・浅草> 三社祭 芸者衆と幇間衆の組おどり

三社祭の「組おどり」は元気の源だった。

見番三社 20150517

もし、「浅草花柳界に行ってみたい!」という人を一度だけご案内するとしたら、私は迷わず5月半ばの三社祭の時期を選びます。

この期間限定、三社祭協賛「組おどり」(東京浅草組合主催)があるからです。組おどりとは……

芸者衆と幇間衆(たいこもち)が数人ずつの「組」をつくり、お祭用にあつらえた衣装で、お祭用の特別な踊りを披露します。今年は、芸者衆2組…「はな」(手古舞姿)、「あやめ」と、幇間衆1組「於八七=おばな」の計3組。見番(花柳界の組合事務所)の広間ではお弁当・お茶つきの観賞会「くみ踊り観賞の集い」が行われ、料亭さんでは各組を呼んでの宴会が開催されます。

料亭さんのお座敷に、組が次々とやってきてお客さんの中に入り、踊りの前後にお酌や会話で座を盛り上げます。組が重なったお座敷は賑やかなこと、華やかなこと。さらにそれ以外の芸者衆もお座敷に入ってもてなしてくれます。

はな組 パンフあやめ組 パンフ

ちなみに、見番所属の幇間さんがいるのは全国でもここ浅草花柳界だけで、現在7名が活躍中。しかも、ふだんのお座敷に複数の幇間さんが呼ばれることはまずないので、5人一緒の芸を見られる三社祭は、その意味でもこの上なく貴重です。

おばな組 パンフ

 

2時間の宴会が「三本締め」で締められた直後、隣のテーブルの男性が「さあ、今年も一年がんばるぞ!」と言う声が聞こえてきました。浅草の人々にとって、三社祭は元旦に負けず劣らず大きな節目なのでしょう。

芸者衆の仕事は、お座敷の中でお客さまをもてなし、「ああ今日は楽しかった。また明日からがんばろう!」と思って帰っていただくこと。芸者衆は「もてなしのプロ」であり、歌舞音曲の芸事も会話も心づかいも美しい立ち居振る舞いもすべて、「もてなしの手段」なのです。

そんな芸者衆の気合もふだん以上に入る三社祭のお座敷は、芸者衆にとってもお客さんにとっても、一年間がんばれるだけの大きな原動力になることをあらためて実感しました。

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