sumikuri のすべての投稿

<東京・浅草>現役最高齢芸者・96歳ゆう子さんを偲ぶ➂

● 雄々しい、奥床しい、嫋やか、気高い

私が、それまで全く縁もゆかりも、興味もなかった「芸者」という人を初めて取材したのは、平成6(1994)年だった。当時百一歳の現役芸者、柳橋の蔦清小松朝じ(つたきよこまつ・あさじ)姐さんである。

以来、各地の芸者さんを取材するうちに、他のどの職業とも似ていない独特の「芸者らしさ」というものを、全国どこの芸者さんも共通に、そして芸歴が長いほど強く持ち合わせていることに気がついた。

続きを読む <東京・浅草>現役最高齢芸者・96歳ゆう子さんを偲ぶ➂

<東京・浅草>現役最高齢芸者・96歳ゆう子さんを偲ぶ②

●何度も繰り返し話すことの意味

2016年三社祭のお座敷にて。「あやめ」組のゆう子さん


2019年2月20日夜、現役最高齢芸者・浅草のゆう子さんが亡くなった。大正12(1923)年生まれ。享年96歳。
*ゆう子(本名・菊池文)さんの本葬は、2月28日午後2時~ 浅草三業会館(浅草見番 。台東区浅草3-33-5 )にて執り行われる。

私が ゆう子さんを取材した回数は 、正式な「インタビュー」として録音したケースに限れば、平成13年から約10回を数える。雑誌の仕事としてのインタビューもあれば、「発表する当てはないが、とにかく昔の話を聞かせてほしい」と見番を通して頼み込んでの自主取材もあった。

何度も何度も、繰り返し出てくる話がある。口に出す回数の多さは、ゆう子さんにとっての、その出来事の重要性と比例するのだと思う。こうして一度や二度の取材ではわからないゆう子さんの歴史の「層」が、なんとなく見えてくるような気がした。

続きを読む <東京・浅草>現役最高齢芸者・96歳ゆう子さんを偲ぶ②

<東京・浅草>現役最高齢芸者・96歳ゆう子さんを偲ぶ➀

●2017年12月、最後だったかもしれないお座敷にて

2017年12月6日。「割烹あさくさ」にて、ゆう子姐さん

2019年2月20日夜、現役最高齢芸者・浅草のゆう子姐さんが亡くなった。大正12(1923)年生まれ。享年96歳。

新聞の訃報によれば、最後のお座敷は一昨年(2017年)12月だったという――もしそれが12月6日だったとしたら、 私は幸運にも、ゆう子さんの最後のお座敷に居合わせたことになる。良き友人のX氏が久しぶりにゆう子姐さんを呼んだお座敷に同席させていただいたのである。

続きを読む <東京・浅草>現役最高齢芸者・96歳ゆう子さんを偲ぶ➀

<全国>2018年・浅原須美の花街めぐり一覧

1月

3日<八王子>八王子芸妓新春の宴(セレオ八王子)/7日<八王子>初春の舞(中町公園)/10日<浅草>新春顔合わせ(浅草見番)/27日<八王子>花街文化塾講話(八王子すゞ香)/27日<大井・大森>大森茶屋開店一周年記念大宴会(大森茶屋)/28日<新橋>なでしこの踊り

2月

2日<浅草>お化けお楽しみ会(割烹あさくさ)/10日<新潟>初春・華の宴*神楽坂芸者衆と古町芸者衆のコラボ(日本料理小三)/22日<八王子>お化け(肉の山本)/24日<奈良>ならまち花あかり大宴席(菊水樓)/25日<奈良>ならまち花あかり・全国花街次世代創造サミット

●3

21日<八王子>八王子コンベンション協会特別シンポジウム「MICEと花柳界」貴重対談(生涯学習センタークリエイトホール)/24日<八王子>市民自由講座「八王子花柳界、復活への軌跡」(生涯学習センター南大沢分館)

●4月

13日<浅草+八王子>浅草会 浅草芸者と仲間たち(浅草公会堂)/15日<八王子>いちょうビジネスクラブ創立20周年記念記念式典講話(夕やけ小やけふれあいの里)

5月

17日<八王子>黒塀に親しむ会総会(エルシィ)/19日<浅草>三社祭お楽しみ会(割烹あさくさ)/27日<新橋>東をどり(新橋演舞場)

●6月

16日<八王子>創価大学教授ウイリアムズ・ムケーシュ先生の取材を受ける(芸妓めぐみさんと。すゞ香)/30日<浅草>お座敷おどり(文化観光センター)

7月

26日<八王子>新見番おひろめ会(八王子三業組合事務所)

8月

3日<浅草>月刊誌『東京人』幇間櫻川米七師匠取材(浅草見番)/3日<八王子>八王子まつり宵宮の舞(中町公園・見番)/4日・5日<八王子>八王子まつり/21日 <浅草>月刊誌『東京人』幇間櫻川米七師匠撮影(浅草見番) /25日<浅草>納涼ビア座敷(浅草見番)

●9

15日<八王子>おわら風の舞(見番)/17日<東京六花街>大江戸寄席と花街のおどり(国立劇場)/22日<金沢>金沢おどり・加賀の宴(県立音楽堂)/23日<新潟>新潟をどり(りゅうとぴあ)

●10月

22日<浅草>浅草おどりプレ公演(台東区生涯学習センター)/28日<八王子>釜石ラスト芸者映画『フクシマ・モナムール』特別上映会・スペシャルトーク(立川シネマシティ)

11月

25日<浅草>酉の市お楽しみ会(割烹あさくさ)

12月

3日<浅草>聖子さん自前披露目の回(瓢庵)/8日<赤坂>赤坂をどり(アクトシアター)

今年も各花街の方々に大変お世話になりました。来年もできる限り各花街を訪れます。どうぞよろしくお願いいたします。浅原須美

<東京・立川> 映画『フクシマ・モナムール』特別上映会・トークイベント開催 

釜石最後の芸者と八王子芸妓との縁をヒントに作られたドイツ映画。一日限りの特別上映会、ついに決定。

https://yukinoe-event.peatix.com/

●映画『フクシマ・モナムール』特別上映会・スペシャルトーク (立川シネマシティ)

10月28日(日)15時~、18時~ の2回上映

東日本大震災被災者で釜石最後の芸者・艶子さんと、八王子芸妓めぐみさんのつながりをヒントに、ドイツ人監督が描いた『フクシマ・モナムール』の、1日限りの特別上映会です。

桃井かおりさん出演。八王子芸妓のめぐみさん、菜乃佳さん、くるみさんも出演しています。

釜石にも同行し、二人の関係を間近で見続けて来た浅原と、めぐみさんのスペシャルトークも一緒にお楽しみください。

詳細、申し込みはこちらから。

https://yukinoe-event.peatix.com/

*艶子さんとめぐみさん、八王子芸妓のつながりは、以下で詳しく紹介してあります。参照ください。 続きを読む <東京・立川> 映画『フクシマ・モナムール』特別上映会・トークイベント開催 

<東京・新橋>変わりゆく花柳界。「なでしこの踊り」➃。若手新橋芸者の挑戦

③より続く

●若手新橋芸者にとって「なでしこの踊り」は〝挑戦〟だった

「なでしこの踊り」終演後、千代加さん(15年目)とのりえさん(10年目)にお話を伺った。

千代加さん(右)と、のりえさん

新橋花柳界最大の年間行事は、5月末の4日間新橋演舞場で行われる「東(あずま)をどり」。大正14年からの歴史を持つ、東京を代表する花街舞踊だ。芸者が300人、400人といた昭和30~40年代には若手はなかなか役をもらえず、やっとついた役が花や木の枝や水の精など人間ではないことも当たり前だった。人数が減った今でも主役級のキャストは芸歴30年以上のベテランが務めることがほとんどだ。新橋花柳界の層は厚い。10年、15年ではまだまだ〝若手〟の部類なのである。

――〝次世代の東をどりのスターを育てよう〟との趣旨で始まった「なでしこの踊り」。一般のお客さんも新橋の芸者衆と触れ合える場として人気ですね。 続きを読む <東京・新橋>変わりゆく花柳界。「なでしこの踊り」➃。若手新橋芸者の挑戦

<東京・新橋>変わりゆく花柳界。「なでしこの踊り」③ 新橋花柳界への入口

②より続く

●新橋芸者が身近になった! 人気の「なでしこの踊り」「なでしこの踊り」は「東(あずま)をどりの次世代のスターを発掘すること」を目的に、平成26(2014)年から年に2回(新春と夏)開催されているイベントだ。新橋演舞場地下特設会場「東(あずま)」を料亭の大広間に見立て、100席ほどのテーブル席のお客さんを、若手の新橋芸者衆が簡単なトークと舞踊とゲーム、写真撮影、会話などで約2時間もてなしてくれる。食事つきでS席12,000円、A席10000円という金額で新橋芸者衆の芸と人柄に身近に接することが出来るのは画期的なこと。平成30年1月、八回目の開催にして初めて参加する機会を得た。

続きを読む <東京・新橋>変わりゆく花柳界。「なでしこの踊り」③ 新橋花柳界への入口

<東京・新橋>変わりゆく花柳界。「なでしこの踊り」② 新橋「東をどり」改革とは

➀より続く

●戦後、国民的大行事となった新橋「東をどり」

〝芸の新橋〟として全国の花柳界から一目置かれる新橋花柳界。今までの取材の中でも東京各地の芸達者な年配の芸者衆が「〝新橋さんに追い付け追い越せ〟を合言葉にお稽古をがんばっている」という話をよく耳にした。その新橋芸者の芸を世間一般に披露する場が、年に一度の「東(あずま)をどり」(東京新橋組合主催の花街舞踊公演)だ。

続きを読む <東京・新橋>変わりゆく花柳界。「なでしこの踊り」② 新橋「東をどり」改革とは

<東京・新橋>変わりゆく花柳界。「なでしこの踊り」➀ 時代の変化の中で

●平成になり、花柳界が門戸を広げ始めた。

私が花柳界に興味を持ち、取材をしはじめた平成7,8年ころ、花柳界はすでに、特定の限られた客層を相手に閉鎖性を売り物にする「一見さんお断り」(要紹介)一色の世界ではなくなりつつあった。たとえば浅草花柳界で「花柳界初体験のお客様に特におすすめのプラン」と銘打った前代未聞の「お座敷入門講座」が始まったのもちょうどそのころだ(*すでに終了)。土曜日の夜限定で、12人以上のグループに対して、芸者衆6名以上がつき、酒肴と飲み物1本つきで税別一人19,800円といういわば〝パックのお座敷遊び〟である。料金を明朗に提示し、芸者衆がお座敷遊びを手取り足取り教えてくれる、という2点において斬新な企画だった。それまで、お座敷のルールは先輩に連れられて恥をかきながら覚えるものだったし、請求書払いが当たり前で〝お得〟といった野暮な金銭感覚の入り込む余地などなかったはずだ。花柳界の長い歴史の中でも、画期的な試みだったのである。

浅草花街お座敷入門講座関係のチラシ(現在は終了しています)

続きを読む <東京・新橋>変わりゆく花柳界。「なでしこの踊り」➀ 時代の変化の中で