<花柳界入門>マナーとコツ③芸名を覚えて芸名で呼ぶ

「〇〇さん」「〇〇姐さん」と芸名で呼ぶと、芸者衆との距離も近づく

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限られた時間の中でお座敷遊びを人一倍楽しむための、もっとも基本的で簡単な方法は、芸者衆の名前(芸名)を覚えて、芸名で呼ぶことです。呼び方は、ふつうに「〇〇さん」、もしくは一本の芸者衆であれば「〇〇姐さん」。*半人前の芸者=半玉(お酌ともいう。京都では舞妓)に対して、一人前の芸者を「一本」(京都では芸妓)という。

一度芸名を覚えれば、次にどこかのお座敷で会ったときに「〇〇さん」と固有名詞で呼ぶことができ、芸者衆との距離も少し近づきます。芸者衆にとって、繰り返し足を運んでくれるお客さんの存在はとてもありがたいもの。また、お客さんにとっても、芸者衆が直接お酌や会話でもてなしてくれるお座敷では、「知り合いの芸者衆がいる」ことが満足度と楽しさをグンと引き上げるのです。

千社札 ウノス芸者衆のほうから「〇〇です」と名乗り、名刺代わりの千社札(せんしゃふだ)を差し出してくれることもありますが、そうでなければ「お名前を教えていただけますか?」「芸名は何とおっしゃるのですか?」などと尋ねるとよいでしょう。

 

ぜひ覚えておいてほしいのは、芸者の名前は「芸名(げいめい)」といい、「源氏名(げんじな)」とは決していわないことです。「源氏名」はそもそも遊女の名前を指す言葉なので、きちんと区別をして使うことが大事です。間違っても芸者衆に「源氏名は何ですか?」などと聞かないように。

芸名は、置屋のお母さん(主人)の名前から一文字使ったり、置屋で共通の文字を使うことも多く、名前でどこの置屋の芸者衆かわかることもよくあります。また、「〇〇子」「〇〇美」などふつうの名前が好まれたり、「〇太郎」「〇助」など男名前がよいとされたなど、芸名には土地や時代によって特徴や流行りがあります。芸名一つからでも話はいくらでも広がっていきます。

そして、全国どこの花柳界でも決して口にしてはいけない芸者衆の呼び方が二つあります。それは……「おばさん」と「おばあさん」。これについては④で詳しく!

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