● 雄々しい、奥床しい、嫋やか、気高い
私が、それまで全く縁もゆかりも、興味もなかった「芸者」という人を初めて取材したのは、平成6(1994)年だった。当時百一歳の現役芸者、柳橋の蔦清小松朝じ(つたきよこまつ・あさじ)姐さんである。
以来、各地の芸者さんを取材するうちに、他のどの職業とも似ていない独特の「芸者らしさ」というものを、全国どこの芸者さんも共通に、そして芸歴が長いほど強く持ち合わせていることに気がついた。
● 雄々しい、奥床しい、嫋やか、気高い
私が、それまで全く縁もゆかりも、興味もなかった「芸者」という人を初めて取材したのは、平成6(1994)年だった。当時百一歳の現役芸者、柳橋の蔦清小松朝じ(つたきよこまつ・あさじ)姐さんである。
以来、各地の芸者さんを取材するうちに、他のどの職業とも似ていない独特の「芸者らしさ」というものを、全国どこの芸者さんも共通に、そして芸歴が長いほど強く持ち合わせていることに気がついた。
●何度も繰り返し話すことの意味
2019年2月20日夜、現役最高齢芸者・浅草のゆう子さんが亡くなった。大正12(1923)年生まれ。享年96歳。
*ゆう子(本名・菊池文)さんの本葬は、2月28日午後2時~ 浅草三業会館(浅草見番 。台東区浅草3-33-5 )にて執り行われる。
私が ゆう子さんを取材した回数は 、正式な「インタビュー」として録音したケースに限れば、平成13年から約10回を数える。雑誌の仕事としてのインタビューもあれば、「発表する当てはないが、とにかく昔の話を聞かせてほしい」と見番を通して頼み込んでの自主取材もあった。
何度も何度も、繰り返し出てくる話がある。口に出す回数の多さは、ゆう子さんにとっての、その出来事の重要性と比例するのだと思う。こうして一度や二度の取材ではわからないゆう子さんの歴史の「層」が、なんとなく見えてくるような気がした。
●2017年12月、最後だったかもしれないお座敷にて
2019年2月20日夜、現役最高齢芸者・浅草のゆう子姐さんが亡くなった。大正12(1923)年生まれ。享年96歳。
新聞の訃報によれば、最後のお座敷は一昨年(2017年)12月だったという――もしそれが12月6日だったとしたら、 私は幸運にも、ゆう子さんの最後のお座敷に居合わせたことになる。良き友人のX氏が久しぶりにゆう子姐さんを呼んだお座敷に同席させていただいたのである。