「戦前を知る芸者」タグアーカイブ

<北海道・小樽> 小樽最後の芸者・喜久さんを想う②。「北のウォール街」で栄えた花街

喜久さんを想う➀より続く。

●JR函館線ガード下で聞いた、小樽芸者のむかし話

小樽駅全景(2011年撮影)

「おたるむかし茶屋」を初めて訪れたときのことはよく覚えている。平成11年、今のうちに戦前の花柳界を知る高齢芸者の話を聞いておこうと思い立ち、以前から気になっていた喜久さんに会いに就航直後のエアDOで北海道に飛んだ。

三月初めの小樽は、まだ真冬の荒天続き。1メートル先も見えない猛吹雪に遭遇し、私は生まれてはじめて(しかも町なかで)遭難の危険を感じた。 続きを読む <北海道・小樽> 小樽最後の芸者・喜久さんを想う②。「北のウォール街」で栄えた花街

<北海道・小樽> 小樽最後の芸者・喜久さんを想う➀。「芸者になんて、もうなりたくない」。

●2017年10月、小樽最後の芸者逝く

小樽在住の知り合いから、小樽芸者・喜久さんの訃報が届いたのは、2017年10月22日のことだった。何度も足を運んだ「おたるむかし茶屋」の店内と、喜久さんの姿がありありと思い出された。

●「芸者になんて、もうなりたくない」と言った人

「おたるむかし茶屋」(2010年撮影)

わきまえ、奥床しさ、つつましさといった「芸者」から私が連想する単語を書き並べていると、頭に浮かんでくる北の光景がある。小樽駅から歩いて約10分、花園町にある和風小料理屋「おたるむかし茶屋」のカウンター内で、ひとり目をつぶり、正座をしてラジオを聞いている小樽芸者の喜久さんだ。

喜久さんは大正13年生まれ。戦前の花柳界を知る各地の高齢の芸者衆の話と姿を記録する仕事の中で、「生まれ変わっても芸者になりたいか」との質問に、ただ一人はっきりと「芸者なんて、もうなりたくない」と答えた人だった。 続きを読む <北海道・小樽> 小樽最後の芸者・喜久さんを想う➀。「芸者になんて、もうなりたくない」。