sumikuri のすべての投稿

<東京・神楽坂>明治時代の〝山手銀座〟。今は「神楽坂をどり」で窓を開く

昔も今も、坂と路地と石畳に芸者衆が映える町

2015年第33回「神楽坂をどり」プログラムより
2015年第33回「神楽坂をどり」プログラムより

●地形と住人に恵まれ、天災を免れた幸運な花街

*2007年 執筆 拙著 『東京六花街 芸者さんに教わる和のこころ』 (ダイヤモンド・ビッグ社 )より抜粋(下線部)

昭和初期、「花街の中に山あり谷あり」「あたかも玩具箱(おもちゃばこ)をひっくりかえしたような感じ」(『全国花街めぐり』昭和4年発行。松川二郎著)と描写された神楽坂花柳界(別称・牛込花柳界)。その隠れ家的な雰囲気は、花街として大きな魅力だった。

戦災で町が焼け、開発でビルが建っても、地形は残る。だから今も神楽坂は、花街らしい風情を残し、坂と路地と石畳に芸者が映える町だ。

続きを読む <東京・神楽坂>明治時代の〝山手銀座〟。今は「神楽坂をどり」で窓を開く

<花柳界入門>マナーとコツ④芸者衆は百歳でも「お姐さん」

花柳界の辞書に、「おばさん」と「おばあさん」は無い!

三味線を弾く

芸者衆の名前(芸名)がわからないときや、会話の中でさらりと呼びたいときは、迷わず「お姐さん」(おねえさん)。たとえ自分の母親や祖母と同年代か、明らかに年上に見えても、決して「おばさん」「おばあさん」と呼んではいけません。

これは全国すべての花柳界に共通の約束事。芸者衆は日々芸事に精進し、お座敷では芸や会話や気遣いでお客さんを楽しませる〝もてなしのプロ〟として、現役である限り、「老けない。年はとらない」という気概をもって仕事をしています。花柳界の中で「おばさん」「おばあさん」がタブーなのは、芸者衆の心意気の表れだといえるでしょう。

また、「お母さん」もNG。花柳界で「お母さん」といえば、芸者衆が置屋の主人を指して呼ぶ言い方と決まっています。お客さんが芸者衆に対して使う言葉ではありません。

続きを読む <花柳界入門>マナーとコツ④芸者衆は百歳でも「お姐さん」

<東京・八王子>花柳界を舞台の「地域発ドラマ」、置屋で撮影開始。NHKBSプレミアム

八王子ならではの〝花柳界物語〟、今秋放映予定。

仮のチラシ。詳細は番組HPを参照ください。
仮のチラシ。詳細は番組HPを参照ください。

●「八王子まつり」での舞台・「宵宮の舞」がクライマックス?

ここ15年ほどの間に、若い芸者衆が増え、途絶えていた花街の行事も復活し、若手が新たな置屋を開業するなど右肩上がりで勢いを増している八王子花柳界。昨年3月には念願だった第一回「八王子をどり」の開催も実現しました。

東京の多摩地区で唯一残るこの花街は最近、新聞・雑誌はもとより、八王子を紹介するテレビ番組では必ずといっていいほど取り上げられ、全国的な知名度も少しずつ上がってきています。

2015年4月13日にはNHKBSプレミアム「TOKYOディープ!」で八王子芸者衆の日常と仕事が紹介されましたが、この度、八王子花柳界を舞台としたドラマ「東京ウエストサイド物語」の制作が決定。先日、キャストが発表され、歌手で八王子観光大使でもある北島三郎さんの出演も話題になっています。

今週から置屋「ゆき乃恵」での撮影が開始。放映は今秋予定とのこと。

続きを読む <東京・八王子>花柳界を舞台の「地域発ドラマ」、置屋で撮影開始。NHKBSプレミアム

<花柳界入門>マナーとコツ③芸名を覚えて芸名で呼ぶ

「〇〇さん」「〇〇姐さん」と芸名で呼ぶと、芸者衆との距離も近づく

⑰イメージ 裾 軽い

限られた時間の中でお座敷遊びを人一倍楽しむための、もっとも基本的で簡単な方法は、芸者衆の名前(芸名)を覚えて、芸名で呼ぶことです。呼び方は、ふつうに「〇〇さん」、もしくは一本の芸者衆であれば「〇〇姐さん」。*半人前の芸者=半玉(お酌ともいう。京都では舞妓)に対して、一人前の芸者を「一本」(京都では芸妓)という。

一度芸名を覚えれば、次にどこかのお座敷で会ったときに「〇〇さん」と固有名詞で呼ぶことができ、芸者衆との距離も少し近づきます。芸者衆にとって、繰り返し足を運んでくれるお客さんの存在はとてもありがたいもの。また、お客さんにとっても、芸者衆が直接お酌や会話でもてなしてくれるお座敷では、「知り合いの芸者衆がいる」ことが満足度と楽しさをグンと引き上げるのです。

続きを読む <花柳界入門>マナーとコツ③芸名を覚えて芸名で呼ぶ

<新潟・古町>行ってきました「新潟をどり」②。お茶と食の楽しみ (2015/6/21)

江戸千家によるお点前と「特製ふるまち花街弁当」

新潟をどり お弁当

●ロビーでお茶席。今年初めての企画が実現

芸者衆の必須ともいえるお稽古の一つに茶道があります。礼儀作法の基本や美しい立ち居振る舞いを身につけるだけでなく、茶の精神を通した「心の修業」の意味合いもあるのでしょう。京都・祇園甲部の「都をどり」や東京・新橋の「東をどり」をはじめ、花街舞踊の会場に芸舞妓・芸者衆によるお点前のお茶席が設けられている光景はよく見かけます。

6月21日(日)に開催された「ふるまち新潟をどり」(以下「新潟をどり」。主催/公益財団法人新潟市芸術文化振興財団 BSN新潟放送。協賛/新潟三業協同組合、新潟芸妓置屋組合、柳都振興㈱。協力/古町花街の会。後援/新潟市)でも、今年初めて、ロビーにお茶席が登場しました。……といってもお茶を点てるのは芸者衆ではなく、芸者衆が日頃お稽古をしている江戸千家のボランティアの方々。お客さんには、「花街とをどり、をどりとお茶、江戸千家について」などの簡単な用語解説を載せた「呈茶のしおり」も配られ、「来場者のみなさんに貴重な日本文化に親しんでいただきたい」との主催者側の思いがよく伝わってきました。(菓子つき一服500円)。

続きを読む <新潟・古町>行ってきました「新潟をどり」②。お茶と食の楽しみ (2015/6/21)

<新潟・古町>行ってきました「新潟をどり」①。古町花柳界は今、見ごろ (2015/6/21)

ベテラン「お姐さん芸妓」と若手の「柳都さん」、間をつなぐあおいさん

新潟をどり 看板

●古町花柳界が、今とても面白い理由とは

多くの新潟市民は気がついていないかもしれませんが、新潟の花柳界「古町(ふるまち)」は、今、全国的に見ても、また古町の歴史の中でも非常に面白い時期を迎えています。

前の記事でも簡単に触れたように、古町は昭和62年に株式会社形式の芸者置屋を日本で初めて実現させた「社員芸妓発祥の地」です。今から28年前――。この前代未聞の挑戦は大きな話題となり、衰退の危機を感じていた全国の花街が注目。各地から視察に訪れ、山形市、酒田市、清水市(当時)などが古町のシステムを参考に芸者衆を育成する株式会社を設立させたのでした。

新潟お姐さんと柳都さん写真

続きを読む <新潟・古町>行ってきました「新潟をどり」①。古町花柳界は今、見ごろ (2015/6/21)

<花柳界入門>マナーとコツ②相手も自分も心地よく

どう振る舞えばお互いに気持ちがいいか、の想像力

芸者影13

二つ目の基本は、この場で同じ時間を過ごすことになった者同士、相手も自分も心地よく過ごすにはどうしたらいいか、想像力を働かせて振る舞うことだと考えています。この場合の「相手」とは、芸者衆だけでなく、他のお客さん、仲居さんなど場を共有するすべての人を指します。

たとえば、大広間で行われる宴会では見知らぬ同士が同席することがよくあります。席に着くとき、隣に先客があれば「今日はよろしくお願いします」とにっこりあいさつをしてから座る。隣の人が後から来たら同じように声をかける――。このたった一言で不思議と初対面の緊張も解けるものです。

続きを読む <花柳界入門>マナーとコツ②相手も自分も心地よく

<東京・芳町>「芸者とお座敷遊び体験」。毎月第2土曜日開催(日本橋・橋楽亭)

外国人も見ず知らずの人も意気投合。お座敷に一体感を生むゲーム

芳町イベント投扇興

●投扇興。落ちた「蝶」に湧き上がる歓声

2015年6月13日(土)、日本橋三越前の商業ビル「コレド室町3」3階の和室「橋楽亭(きょうらくてい)」に、わーっと沸きあがった歓声と大きな拍手。両手を挙げて喜びを全身で表すのはフランス人男性の観光客。芳町(よしちょう)の芸者衆がもてなす「芸者とお座敷遊び体験」で行われたゲーム、「投扇興」の一コマです。

投扇興は、二人で交互に扇を飛ばして木製の台の上の駒(蝶という)を落とし、点数を競い合う優雅なお座敷遊び。江戸時代に遊興場や酒席の遊びとして大流行しました。

投扇興点数表アップ正式には、落ちた扇と蝶の位置関係(銘という)に応じて点数が決められ、銘にはそれぞれ源氏物語の巻の名がつけられています。右図のような珍しい銘は点数が高く、とくに奇跡的ともいえる「夢浮橋」「篝火」には50点の最高得点がついています。

続きを読む <東京・芳町>「芸者とお座敷遊び体験」。毎月第2土曜日開催(日本橋・橋楽亭)

<花柳界入門>マナーとコツ①基本は「芸者衆に対する敬い」

「もてなされる立場」から「もてなしのプロ」を敬う

お座敷おどり 去る芸者

かつては「一見さんお断り(要紹介)」が当たり前、社会的地位や経済的余裕のある限られた人々の仕事場・社交場・遊び場だった花柳界は、ここ20年ほどの間に大きく様変わりしました。従来の常連客を大事にしながら、女性、若者、観光客などそれまでこの世界に縁のなかった一般の人々にも目を向け、新たな客層に間口を広げはじめたのです。

花柳界情報がインターネット等で盛んに発信され、初心者でも参加しやすい会費制のお座敷遊びの会なども各地の料亭で行われています。今や、その気になれば誰もが、ある程度の深さまで足を踏み入れられる時代。その一方で、身近に花柳界の指南役が見当たらず、マナーの面で不安に思う人も多いのではないでしょうか。

お座敷のマナーは決して難しいものではありません。花柳界ならではの決まり事やお客としてわきまえておきたい心得はいくつかありますが、基本的に二つのことを頭に入れておけば、たいていのことは臨機応変に対応できるはずだと私は考えています。

続きを読む <花柳界入門>マナーとコツ①基本は「芸者衆に対する敬い」

<東京・浅草> 毎回満席「お座敷おどり」② 観音裏の芸者衆が、〝表〟で踊る意味

知名度をさらに上げた浅草芸者。次は、お客さんを観音裏へ。

お座敷おどり 全体風景

●浅草寺の裏手に静かに広がる浅草花柳界

「浅草に芸者さんがいるのは知っているけれど、見かけたことがない。一体どこにいるのだろう……」と不思議に思う人も少なくないかもしれません。実は浅草の花柳界は、人々が観光目的ではまず足を延ばすことのない場所にあるのです。

そこは浅草寺観音堂の裏手――通称「観音裏」。台東区浅草3丁目を中心とするこの一帯は、観光客で年中賑わう雷門や仲見世あたりとは趣きが大きく異なり、静かで人影もまばらな界隈です。

観音裏のメインストリート・柳通りには見番(東京浅草組合=料亭と芸者置屋で構成する花柳界の組合事務所)があり、現在、料亭(芸者衆を呼ぶことのできる店)は8軒。25名の芸者衆(他に来週6月16 日にお披露目をする新人さんや見習いさんがいます)、7名の幇間衆(たいこもち)が日々、お稽古に励みお座敷を務めています。

4シーズン、全68公演、のべ約7000人が入場

浅草お座敷おどり パンフ

このように、ふだんは観音裏を拠点に活動する芸者衆が、いわば〝観音表〟の雷門前に出向き、区立の会場で一般のお客さんや観光客の前で踊るところに、「お座敷おどり」(主催:浅草観光連盟 後援:台東区・ときめきたいとうフェスタ)というイベントの価値と意味があります(詳細は上のチラシでご確認ください)。「入場無料」という思い切った設定も、これまで花柳界に縁のなかった人や将来芸者さんになりうる若い女の子たちなど、幅広い層に向けて浅草芸者の存在をPRするという目的ゆえ、でした。

続きを読む <東京・浅草> 毎回満席「お座敷おどり」② 観音裏の芸者衆が、〝表〟で踊る意味