<東京・新橋> 5月22日・2日目(東をどり百回記念公演)

東をどり百回記念公演

第百回 東をどり

●神楽坂・浅草・上七軒それぞれのオリジナル曲で

東をどり2日目。今回2幕目で登場するのは東京から2花街(神楽坂・赤坂)そして京都からは京都五花街の一つ・上七軒(かみしちけん)。

神楽坂は「ひと里」(泉鏡花の随筆から神楽坂を中心とした部分を演奏)、「神楽ざかえ」(平成21年に新しく制作した神楽坂のオリジナル曲)

浅草は「浅草まいり」(長唄「越後獅子」の替え歌で幕末ころの浅草寺界隈を唄った軽快な曲)、「並木駒形」(浅草から吉原通いの道筋を唄ったもの)、「浅草名物」(浅草の名所を浅草芸者の心意気とともに唄いあげる)

上七軒は「御所のお庭」(京都御所を模した豪華な雛飾りを詠った)、「団子え」(上七軒の紋章は五つ団子)、「上七軒夜曲」(昭和43年以来北野をどりのフィナーレとして唄い継がれている)。

各花街の名所や特徴を表現したオリジナル曲は、今回のように全国各地の花柳界が登場する舞台で、各地をアピールするのに最適だと思う。観客もよく知っている名所が出てくるので親しみやすく、振りもわかりやすくて楽しめる。

まさかの3花街合同「新さわぎ」に鳥肌が!

「上七軒夜曲」が終わり、これで2幕も下りるかと思いきや、神楽坂・浅草の芸者衆が舞台に再登場。耳慣れたテンポのいい曲が流れてきた。

〝会いーーーーたくて〟――。えッ、これは紛れもなく浅草のオリジナル曲「新さわぎ」では??

なんと、3花街の芸者衆が勢ぞろいで「新さわぎ」を踊ったのだ。「新さわぎ」は、浅草三社祭の芸者衆のくみ踊りでさんざん聞いてきた曲だが、これを浅草以外の芸者衆が、しかも3花街合同で踊るなんて……思わず鳥肌がたった。

演奏する地方さんも3花街合同。2段(か3段)にずらりと並んで座る前で、20数名の芸者衆がフォーメーションを変えながら踊る壮観! 昔の花柳界全盛時代は当たり前の光景だったのだろうな、と思いを馳せた。

それにしてもなぜ浅草の「新さわぎ」を3花街で?

……そうか、3花街の共通項といえば花柳流の花柳輔太朗お師匠さんが指導に当たっていることだ。今回、この舞台のために上七軒、神楽坂の芸者衆は演奏と振りを短期間で覚え、3花街で合わせたのは直前だったと聞く。〝芸者〟である以上、土地が違ってもいざとなればぴったりと息を合わせられるのだ。さすがだ。東をどり百回記念公演ならではの特別バージョン、堪能した。