<全国>2019年・浅原須美の花街めぐり一覧

●1月

3日<八王子>八王子芸妓新春の舞(セレオ八王子)/10日<浅草>新春顔合わせ(浅草見番)

●2月

2日<浅草>お化けお楽しみ会(割烹あさくさ)/20日<浅草>最高齢現役芸妓ゆう子さん亡くなる/22日<八王子>お化け(すゞ香)/23日<新潟>初春・華の宴*浅草芸者衆と古町芸者衆のコラボ(日本料理小三)/28日<浅草>ゆう子さん告別式(浅草見番)

●3月

2日<新橋>なでしこの踊り2019早春(新橋演舞場地下食堂)/23日<赤坂>お花見の会(赤坂浅田)/30日<新橋>東をどりプレ座敷(金田中)

●4月

24日<浅草+八王子>浅草会 浅草芸者と仲間たち(浅草公会堂)

●5月

17日<安城・桑名>花街調査 新潟大学都市計画研究室(岡崎篤行教授)に同行。安城芸妓文化振興会笑美素会ヒアリング→桑名船津屋見学 桑華連会長きんはるさんヒアリング/18日<浅草>三社祭お楽しみ会(割烹あさくさ)/23日<新橋>東をどり観賞(新橋演舞場)/26日<新橋>東をどり観賞(新橋演舞場)

●7月

30日<浅草>「東京人」取材(浅草見番)

●8月

2日<八王子>八王子まつり宵宮の舞(中町公園)・柳遊まつり(八王子見番)/8日<浅草>「東京人」取材(浅草見番)/16日<新橋>なでしこの踊り夏(新橋演舞場地下食堂)/24日<浅草>ビア座敷(浅草見番)

●9月

1日<東京六花街>大江戸寄席と花街のおどり(国立劇場)/8日<新潟>新潟をどり(りゅうとぴあ)/14日<八王子>おわら風の舞(中町近辺、八王子見番)/16日<箱根>芸妓優美子さん舞踊の会(国立劇場)/22日<金沢>金沢おどり・加賀の宴(県立音楽堂)

●10月

26日<浅草>浅草おどり(浅草公会堂)/27日<水戸>花街調査 新潟大学都市計画研究室(岡崎篤行教授)に同行。水戸芸能士協会・安原保子さんヒアリング。割烹魚政で食事

●11月

21日<八王子>八王子黒塀に親しむ会(エルシィ)/27日<浅草>乃り江さんハタチの宴(浅草ビューホテル)/<浅草>悠游亭(浅草見番)

●12月

8日<全国>花街空間研究会報告会(東京工業大学)

*今年も大変お世話になりました。来年もどうぞよろしくお願いいたします。

<東京・新橋> 入門編でも芸は本物「なでしこの踊り」

● 新橋花柳界への、はじめの一歩

2014年に始まり、春夏2回、新橋若手芸者衆の踊りとお座敷遊びを楽しむイベントとして定着した「演舞場発文化を遊ぶ なでしこの踊り」。2019年夏の回で通算11回目を迎えた。

「なでしこの踊り」は、新橋花柳界へのはじめの一歩として最適な機会だ。

誰でも、電話やインターネットで申し込むことができ、特性会席弁当と芸者衆の踊り、お座敷遊び、歓談を含む約2時間をS席12000円、A席10000円で楽しむことができる。写真も動画もOK。約120の席はほぼ毎回満席の人気だ。

*次回「なでしこの踊り2020早春」は、2月27.28.29日、3月1.2日開催。詳細はこちら

特性会席弁当 デザートもつく

登場するのは、これからの新橋花街を担う若手を中心とする4人の芸者衆。最近は芸歴50年、60年を超えるベテランの芸者衆も加わり、新橋芸者の風格と芸にとりくむ姿勢が長い歴史の中で連綿とつながってきたことを感じさせる。

●わかりやすい演目の解説

芸者衆の紹介のあと、芸者衆の役割によって異なる着物や帯、鬘などの違いや、これから踊る演目についてわかりやすく説明をしてくれる。

この解説、日本舞踊や邦楽に興味を持てるように実にわかりやすく工夫されている。聞いているうちに、踊りへの期待が否が応でも高まるのだ。

たとえば、端唄「ステテコ節」は現在でいえばラップだ、との解釈で端唄がグンと身近に感じられる。小唄「さつまさ」はきりっと仇っぽく踊り、同じ小唄でも「からかさ」は愛嬌たっぷりに可愛らしく色っぽく踊る、といった違いを教えられたうえで見ると、「なるほど、たしかに……」と納得できる。日本舞踊や邦楽には難しい印象があるだけに、少しでも理解できただけで得をしたような気になる。

端唄「ステテコ節」を踊る(左から)小花さん、小福さん、小優さん

●22年前の紅緑会の音源で「夕月」を踊る

今回はベテランのあやさんも参加。プログラムのご挨拶には「古株なれど心は若く……」とあり、ユーモアあふれる自己紹介に、親しみを感じてしまう。

あやさんが踊った演目は常磐津「夕月」。「江戸時代、大阪と京都・伏見を結ぶ淀川で、水上交通の要として発展した早舟の船頭を主題とした舞踊です。今では江戸前の風情に移し替え、男方の姿ですっきりと踊ります」(プログラムより)。

常磐津「夕月」を踊るあやさん

そして、三味線や唄の音源はなんと22年前、平成9年の紅緑会*のときの演奏を録音したものだという。たまたま私はこのときの紅緑会を見に行っていた。プログラムを確認すると、確かに東京新橋組合「夕月」の演目があり、立方(踊り手)は、若竜さんとあやさん!だった。しかもこの年の文部大臣奨励賞・邦楽の部を受賞していたのである。その栄えある演奏が22年後に「なでしこの踊り」で復活したのだった。

「なでしこの踊り」は、〝本物〟の芸にわかりやすく触れることのできる貴重な機会だった。

第18回「紅緑会」(平成9年)プログラムより。東京新橋組合の芸者衆

 

第18回「紅緑会」プログラムより
第20回「紅緑会」プログラムより。文部大臣奨励賞邦楽の部を東京新橋組合常磐津「夕月」が受賞

 

*全国花街芸妓合同公演「紅緑会」(こうろくかい)。社団法人日本料理文化振興協会主催。昭和55年(1980 )から平成12年(2000)まで明治座、新橋演舞場、国立劇場などを会場に(昭和59年第5回からは国立劇場)開催された。全国からよりすぐりの12~14花街(平成11年は10花街。平成12年は不詳)が参加し、文部大臣奨励賞ほか表彰も行われた。「紅緑会に出る」ことは芸のレベルを認められた証であり、全国の花街の目標だった。開催されなくなって20年になるが、今でも「◯年の紅緑会に出た」ことを誇りとして語り継ぐ花街は少なくない。

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