<西日本・X花街> 芸者・りんものがたり➄ 悲喜こもごも、戦前のお座敷

芸者・りんものがたり➃より続く

●大金持参で4日も5日もお茶屋に居続ける

りんは15歳で半玉(はんぎょく。半人前の子どもの芸者)になった。裾を引いた振袖の着物にぽっくりを履いた姿は京都の舞妓に見紛うが、後ろ姿を見れば違いは一目瞭然だ。帯を舞妓の特徴である〝だらりの帯〟ではなく、ふつうにお太鼓か蝶々に結んであるからだ。この世界の仁義として〝京都真似〟はできなかった。

戦前のX町で羽振りのいい客といえば、なんといっても山持ち――山林地主の材木屋だ。とくにXの檜は質が良く高値で売れた。材木屋の社長が商談のために番頭を連れて山を下りて来る。一本の木が売れればごっそり儲かる。厚い現金の束を腹巻の中へごっそり入れて、「これで遊ばせてくれや」とX町のお茶屋へやってくる。 続きを読む <西日本・X花街> 芸者・りんものがたり➄ 悲喜こもごも、戦前のお座敷