<北海道・小樽> 小樽最後の芸者・喜久さんを想う➃。「おたるむかし茶屋」で毎晩、何を思う

喜久さんを想う➂より続く

●目にもとまらぬ速さで受話器を取る

「おたるむかし茶屋」(2010年撮影)

喜久さんとは不思議と年賀状のやりとりが続いた。必ずひと言、「たまにはお顔見せてください」「お会いしたいですね」「お立ち寄りください」などと書き添えてある。が、小樽は遠い。

たまに電話をかけると、ベル音が鳴ったか鳴らないかくらいの驚くべき速さで「もしもし」と元気な声が聞こえる。いつかけても、必ずそうだった。「電話に出るの、速いねー」「そお? ひまだからさ」。「お客さんは?」「来なくていいんだ、昔さんざん働いたから」。何度、同じやり取りを繰り返しただろうか。

初対面から11年後の平成22年、再び「おたるむかし茶屋」を訪れるチャンスがやって来た。 続きを読む <北海道・小樽> 小樽最後の芸者・喜久さんを想う➃。「おたるむかし茶屋」で毎晩、何を思う