<東京・新橋>変わりゆく花柳界。「なでしこの踊り」③ 新橋花柳界への入口

②より続く

●新橋芸者が身近になった! 人気の「なでしこの踊り」「なでしこの踊り」は「東(あずま)をどりの次世代のスターを発掘すること」を目的に、平成18年から年に2回(新春と夏)開催されているイベントだ。新橋演舞場地下特設会場「東(あずま)」を料亭の大広間に見立て、100席ほどのテーブル席のお客さんを、若手の新橋芸者衆が簡単なトークと舞踊とゲーム、写真撮影、会話などで約2時間もてなしてくれる。食事つきでS席12,000円、A席10000円という金額で新橋芸者衆の芸と人柄に身近に接することが出来るのは画期的なこと。平成30年1月、八回目の開催にして初めて参加する機会を得た。

この日は「新橋花柳界は初めて」というお客さんが6~7割を占めていた。満席である。男女比は6:4くらいだろうか。50代以上の年配客が多いが、明らかに20代の若い女性もちらほら。60代と思しき女性の二人連れが「芸者さんと間近に接するなんて滅多にできないことだから、友だち同士で誘い合って来た」と興奮気味に話してくれた。

●「見どころ解説」が、舞踊を何倍も楽しくする

特製会席弁当

今回の参加芸者衆は、千代加さん、のりえさん、清乃さん、たまきさん(半玉)の4名だ。特製会席弁当をいただきながら、舞台でチームリーダーの千代加さんが受けているインタビューに耳を傾ける。千代加さんは広島出身。中学・高校のころから歌舞伎や時代劇に興味を持ち、江戸のきっぷのよい芸者像にあこがれて芸者になり、2017年10月で15年目を迎えたという。ちょっとした個人的なエピソードを知るだけで、急に親近感が沸く。

清乃さん(右)、たまきさん(中)、千代加さん(左)

続いて、清乃さんと半玉(はんぎょく=半人前の子どもの芸者。京都の舞妓にあたる)のたまきさんの衣裳の違いを解説。「黒紋付に引き着の着物は芸者のフォーマルウェア」「柳の帯とべっ甲の笄はセット」「日本髪の鬘は、清乃さんは高島田、のりえさんはつぶし島田、千代加さんは(男役なので)前割れ」。

さらに、この日披露する踊りの演目について、千代加さんが説明。「春日三番叟」は五穀豊穣を願う楽曲で足拍子で地を固め、鈴の段では種まきの所作を表す、「七福神」は一人七役を踊り分ける、「松竹梅」は三人の立方(たちかた=踊り手)が松と竹と梅を踊り、私が立派でしょ?と競い合う、「門松」はお正月遊びに興じている様子、などそれぞれの見どころを前もって教えてくれた。……この「見どころ解説」を設けたことは大正解だったと私は思う。ある程度内容を理解してポイントを押さえて見るのと、ただ漫然と見るのでは、前者のほうが何倍も楽しめる。おかげで日本舞踊の楽しさと面白さを味わい、踊る側の難しさも想像することができた。

演奏は新橋が誇る地方(じかた)芸者の録音だが、音響が非常に良いのでテープのハンディはほとんど感じられなかった。

最後はお座敷の定番曲「さわぎ」
演目解説

●小学生の女の子も! 新橋芸者とお座敷遊び

踊りの後は、お座敷あそび。屏風をはさんでジェスチャーでじゃんけんをする「とらとら」はお座敷遊びの定番だ。お客さんと芸者衆が舞台で勝負。その中の一人は、なんと小学校5年生の女の子だった。若い女性や子どもが新橋芸者と触れ合っている……一昔前には考えられないことである。

屏風を挟んで、ジェスチャーでじゃんけん。お座敷遊びの「とらとら」

最後は、芸者衆と自由に写真撮影をして、2時間半の宴席はお開きになった。

終演後、千代加さんとのりえさんにインタビューの時間をとっていただいた。「なでしこの踊り」は、私が思っていた以上に若手の新橋芸者にとって大きな意味を持つイベントであることがわかった。

➃に続く

*第94回東をどり 5月24日(木)~27日(日)一般販売4月中旬予定