あの日、避難所の一画が稽古場に変わった。
●歩くのも一苦労だったのに、踊るときはなめらかに動く足
2011年6月、八王子芸者のめぐみさんに同行して、釜石旧第一中学避難所に向かった。東北新幹線・新花巻駅で釜石線に乗り継ぎ、東京から片道5時間の長旅。めぐみさんとひと月ぶりの再会を果たした艶子さんは、「うれしくて夕べは寝られなかったのよ。あなたが来るからせめて髪だけは結ってもらったの」とマットレスの上で涙ぐんだ。送られた舞扇を手にすると、座ったままひらひらと舞わせ、上半身だけで踊りだした。 続きを読む <岩手・釜石> 追悼 最後の釜石芸者・艶子さん③ 避難所で八王子に受け継がれた釜石の芸