<石川・金沢>行ってきました「金沢おどり」② 一調一舞&一管

峯子さんが舞台に座っているようだった

2015 金沢おどり2

*PC本体故障による修理のため、しばらく更新が滞りました。少し時間がたってしまいましたが「金沢おどり②」(9月19日観賞)をアップいたします。

●笛の音に、峯子さんを忍ぶ

今年いちばんの話題は、西茶屋街の名妓、小鼓の乃莉さんと舞踊の八重治さんによる「一調一舞」。当HP「もうすぐ金沢おどり①~⑤」でも書いたように、笛の峯子さんと乃莉さんの「一調一管」は金沢の誇る至芸で、金沢おどりの人気演目の一つでした。……が、今年3月に峯子さんが突然逝去。これに替わり、金沢おどりに向けて西のもう一人の名妓・八重治さんが乃莉さんと初めて二人で組むことになったのです。

曲目は「序の舞」。プログラムによると「序の舞とは、能で使う言葉で、女が静かに舞う舞事です。人の世の定め(運命)を、扇の裏おもてに見立て、今は無き名人を慕う心をうたい上げます」。峯子さんを想わせる解説でした。

2015金沢おどり5うちわ

きれいに結った白髪がトレードマークだった乃莉さんが、実に50年ぶりという鬘と引き着姿で現れ驚いていると、峯子さんの笛の音が流れてきました。力強く、澄んだ音。乃莉さんの右側のぽっかり空いた場所に、まるで峯子さんが座っているようでした。翌日の北國新聞には「私たちにとっては姐さん(峯子さん)を思っての舞台です」とのお二人のコメントが載っていました。芸妓同士、お互いに認めあい、尊敬しあった間柄。一調一舞は、三人で作り上げた舞台のように感じました。

2015金沢おどり開催を知らせる西茶屋街のお茶屋
2015金沢おどり開催を知らせる西茶屋街のお茶屋

その前日、西茶屋街のお茶屋「美音」を訪れ、峯子さんにお線香をあげました。私も何度もお会いしているお手伝いさんのトクダさんによると、「(峯子さんは)去年の夏は具合が悪くて伏せっており、誰もが〝金沢おどりは無理だろう〟とあきらめていた。ところが驚いたことに公演が近づくと起き出して、稽古を始め、舞台をやり遂げた。終わった後はしばらく放心状態で、ぼーっとしていたことが多かった」とのこと。毎年「今年で最後や」と言いながら、周囲の期待に応え、見事な芸を披露し続けてきた峯子さん。昨年の金沢おどりは、「今度こそ最後」と覚悟して執念で臨んだ舞台だったのかもしれません。

峯子さんは自分がいなくなるかわりに、「一調一舞」という素晴らしい芸をこの世に生み出しました。

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