<石川・金沢>行ってきました「金沢おどり」。

大和楽ならではのテンポとハーモニーの美しさ

2015金沢おどり1北陸新幹線が開業して最初の、第12回「金沢おどり」(2015年9月19日~22日)が開催されました。初日に観賞。

金沢の格調高い伝統芸能「素囃子」で幕を開け、間に「大和楽でつづる」全八景を挟み、金沢名物「お座敷太鼓」、そして総おどりの「金沢風雅」で〆る、金沢らしさ満載の一時間半。毎年のことながら、舞台はまさに〝動く美しい絵画〟。芸妓衆の姿、仕草の美しさが際立つよう隅々まで計算されつくした演出に、会場から「わーーっ」と静かなどよめきが起こっていました。

2015金沢おどり10 チラシ今回は「大和楽(やまとがく)」の視点から金沢おどりの魅力に触れてみたいと思います。金沢おどり全体に、他の花街舞踊とは異なる明るさ、親しみやすさが漂うのは、大和楽という新邦楽をベースにしていることが大きな理由の一つだからです。

昭和8(1933)年大倉聴松(喜七郎男爵)が、日本の伝統音楽に現代的な高音の発声と旋律を加えて、新しい邦楽「大和楽」を創りました。女性のための音楽といわれ「河」「あやめ」「扇売り」「四季の花」など数々の名曲が生まれました。(下線部分は金沢おどりプログラムより抜粋)

日本舞踊の音楽といえば清元、常磐津、長唄などが一般的ですが、花街舞踊に大和楽をあえて起用した構成・演出の駒井邦夫氏によれば、「美しさとテンポを求める金沢おどりにはぴったり」(『10倍楽しめる金沢おどり徹底ガイド』より)とのこと。テンポのよい三味線の旋律、ハミングやハーモニーの唄声の美しさは、芸妓衆の踊りと同様、邦楽に慣れていない耳にも心地よく、そして強く印象に残るものでした。

京都祇園甲部の「都をどり」、東京新橋の「東をどり」など各地で開催されている花街舞踊は、花柳界への入口として最適の機会だといえます。前々から、中でも金沢おどりは邦楽に全く縁のない人でも文句なしに楽しめるエンターテインメント性に優れており、自信をもって勧められる花街舞踊だと思っていたのですが、その背景の一つに「大和楽」があることをあらためて意識しました。

「加賀の宴」。この日はひがしの芸妓衆が舞踊を披露
「加賀の宴」。この日はひがしの芸妓衆が舞踊を披露

終演後の宴席「加賀の宴」で隣同士になった、富山から見えたという60代とおぼしき二人連れの女性は、「まったく初めてなんです。試しに来てみたら、本当にきれいで感動しました」と興奮気味に話し、テーブルに回ってきた芸妓さんと記念撮影を楽しんでいました。

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