<東京・芳町>「芸者とお座敷遊び体験」。毎月第2土曜日開催(日本橋・橋楽亭)

外国人も見ず知らずの人も意気投合。お座敷に一体感を生むゲーム

芳町イベント投扇興

●投扇興。落ちた「蝶」に湧き上がる歓声

2015年6月13日(土)、日本橋三越前の商業ビル「コレド室町3」3階の和室「橋楽亭(きょうらくてい)」に、わーっと沸きあがった歓声と大きな拍手。両手を挙げて喜びを全身で表すのはフランス人男性の観光客。芳町(よしちょう)の芸者衆がもてなす「芸者とお座敷遊び体験」で行われたゲーム、「投扇興」の一コマです。

投扇興は、二人で交互に扇を飛ばして木製の台の上の駒(蝶という)を落とし、点数を競い合う優雅なお座敷遊び。江戸時代に遊興場や酒席の遊びとして大流行しました。

投扇興点数表アップ正式には、落ちた扇と蝶の位置関係(銘という)に応じて点数が決められ、銘にはそれぞれ源氏物語の巻の名がつけられています。右図のような珍しい銘は点数が高く、とくに奇跡的ともいえる「夢浮橋」「篝火」には50点の最高得点がついています。

今回はルールを簡略化。2人1組で練習と本番をそれぞれ3投ずつ行い、蝶を落とした回数で競い合いました。ところが……最初に見本を示した芸者衆も含め4~5組が対戦しても、誰も一度も落とせない0対0の引き分けが延々と続いたのです。「こんなことは滅多にないんです……」と経験豊富な芸者衆も苦笑いをする中、最後に登場したフランス人男性がラストの3投目でついに蝶を落としたのでした。

その日、縁あってたまたま同席した初対面のお客さん10数名が一斉に拍手をして大喜び。国籍も違う見ず知らずの人々の間に、瞬時に一体感が生まれました。

●「江戸時代からの芳町の灯は、絶対に消さない」

芳町(葭町とも書く)は日本橋人形町から浜町あたりの旧地名で、現在の東京六花街(新橋・赤坂・芳町・神楽坂・浅草・向島)の一つ。江戸時代初期からの芝居町で元禄年間(1688~1704)には芸者がいたとの説もあり、現存する東京最古の花街とされています。昭和30年代には150軒もの料亭を約300人の芸者衆が毎晩のように賑わしていました。

現在、芳町の料亭は濱田家1軒。7名になった芸者衆の、「江戸時代から続く芳町花柳界の灯は絶対に消さない!」との思いは強く、周囲の協力を得ながらさまざまなイベント企画を行っています。

この「芸者とお座敷遊び体験」は、新日屋の企画で2014年4月から始まった「東京の新しい体験型観光コンテンツ」の一つです(毎月第二土曜日開催。18時~19時。ワンドリンクつき税込5500円)。この日もてなしてくれた芸者衆は5人。地方(じかた=演奏を担当する芸者)のひろ姐さんと長作姐さん、立方(たちかた=踊りを担当する芸者)の八重さん、久和さん、おもちゃさん。

芳町イベント 踊り 2015.6.13

踊りを4曲(「お江戸日本橋」「潮来出島」「青すだれ」「さわぎ」)踊った後、30分以上たっぷり時間をかけてゲームを3つ(とらとら、投扇興、こんぴらふねふね)。最後に「奴さん」の踊りで威勢よく〆め、希望者が芸者衆と写真撮影をして終了。毎回、外国人の参加率は高く、半分ほど占める回もあるとのことです。

芳町芸者のリーダー的存在で、3人の若手を抱える置屋「三松家」主人・久松さんは、15歳でお酌(半玉)になって以来、芸道ひとすじ。お客さんの反応についてお聞きすると、「傘やてぬぐいを用いたわかりやすい踊りは喜ばれますし、とくに外国の方は乗りが良くて、三味線や唄に合わせてリズミカルに行うゲームがお得意ですね」と手ごたえを感じていました。*次回は7月11日(土)開催予定。

●芳町見番でも、お座敷遊び体験を開催

金沢お座敷太鼓芳町の芸者衆は、甘酒横丁近くの芳町見番(花柳界の事務所)でも、「芳町芸者衆とミニお座敷体験」と称したイベントを年に数回行っています。「見番には金沢のお座敷太鼓が置いてあるんです。お客さまと一緒に叩いて邪気を払ったり、太鼓を叩きながらジャンケンをするゲーム〝おまわりさん〟もとっても盛り上がるんですよ。ぜひ一緒に楽しみましょう」(久松さん)。

*次回の「芳町芸者衆とミニお座敷体験」は夏ごろを予定。上の写真は、金沢茶屋街名物「お座敷太鼓」(金沢ひがしのお茶屋にて)。

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